『WESTFIELD RECORD』
2020年、新型コロナウイルスの世界規模の感染拡大により、人類はいまだかつて経験したことのない未曾有の状況に直面した。 感染が止まらぬ中、世界各国では最終手段としてロックダウン(都市封鎖)が実行され、外出禁止を強いられた人々は、強いストレスを抱えた生活を余儀なくされた。 
そんな中、アメリカのとあるロックダウン中の町では興味深いことが起こっていた。 ロックダウンから数日たったころ、町で唯一の小さなレコード店『WESTFIELD RECORD』のオーナーが、所有していた全てのスピーカーを店の屋根の上に置き、 自分で選んだ曲を1日1曲だけ、大音量で流し始めた。無論、住民たちは当初これに猛反発した。
しかし、放送が繰り返されるにつれ、彼らは曲が流されるのを心待ちにするようになっていった。彼らにとってその放送は、いつの間にか1日のなかの数少ない楽しみとなっていたのである。 さらに、住民たちはその放送に呼応するかのように、自らの家の屋根にもスピーカーを置き、『WESTFIELD RECORD』が曲を流し始めると同じ曲をかけ始めた。
その結果、サウンドは町を包み込むほど大音量となり、その音はなんと店から7km離れた場所でも聞こえていたという証言もある。 『WESTFIELD RECORD』から始まったこの放送は、一緒に不安定な状況を乗り越えようという活力や一体感を、住民たちの間に無意識のうちに生み出し、その現象はロックダウン解除の日まで毎日続いた。 ロックダウン解除後の店には、感謝を伝えにくる者、「○月○日のあの曲名を教えて!」と訪ねてくる者や、曲を口ずさんで見せる者も現れ、今でも多くの人が訪れているとのことだ。 
この一連の出来事を知り、興味を持った私たちは『WESTFIELD RECORD』に協力を仰ぎ、このコンピレーションアルバムを制作することを決めた。 改めて音楽の力を確認させてくれた、小さなレコード店と町の住民たちとの不思議なエピソードに思いを馳せながら、このアルバムを楽しんでもらえたらと思う。
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